たくやかつみの日記

自己顕示欲の廃棄場

けいおん!で読み解く創作

 

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完走!


いまさらですが私アニメけいおん!1期2期ともに完走いたしました。

もう10年以上前のアニメなんですよねこれ、今更どころではありませんが完走いたしました。みんなありがとう!

完走した感想ですが、感動しました!以上!

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

本題!


それでは本題に入りましょう。

今回のテーマはアニメけいおん!を通した創作理論です。

けいおん!といえばきららアニメ界のレジェンドとして知られていますね。全国の高等学校に軽音楽部または軽音同好会を乱立させるきっかけにもなったすごいアニメです。皆さんの母校にも軽音部なかったですか?僕の母校は同好会ながらもそこらの正式な部活の倍くらい部員がいた記憶があります。

僕としてはこのけいおん!というアニメにちょっと創作においての面白味を感じたわけです。
感じていなければTwitterに感動した!とだけ言って終わりですからね。

説明!


まずはけいおん!知らないって人の為にけいおん!とはどういう話なのかについて簡単に説明します。だいたいのブロガーは心が荒んでいるので不愛想にWikipediaのリンクを貼り付けて終わりですが僕はそんなこといたしません。ちゃんと説明しますよ。

けいおん!とはかわいい軽音部の女の子達の日常を描いた作品です。以上。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

補足するとガッチガチの音楽系とかではなくあくまで日常がメインなので練習シーンはたまにあるかなって感じです。まあ原作はきららですからね。きららではよくある話ですけど京アニの作風的には結構珍しいのではないでしょうか。最近は特に意識高い作品多いですし。

よく見たら僕の書いたこと全部wikiに書いてますね。なんなら僕の説明よりずっと詳しいので前言撤回します。Wikipediaのリンク見たほうが早いです。

ja.wikipedia.org

作風!


これは僕個人の勝手な偏見なのですが京都アニメーションって例外もありますが基本的によくわからない原作とか影が薄いやつとかを万人向けに整えたり原作が壊れない程度に色々手を加えてちょっとブランド性を作り出しているイメージがあります。原作通りに作ることに重点をおかれている現代においてはなかなか挑戦的です。
正直アニメ会社はあんまり詳しくないのですが原作アレンジをファンの怒りを買うことなく自然に行えるのはこことジブリ*1とシャフトくらいではないでしょうか。シャフトは演出が独特すぎるだけで原作まんまなことが多いですが。
しかしまあけいおん!はかなり原作に忠実だと思います。ただやはり京都アニメーションなので他のきららとはちょっと雰囲気がなんというか違うんですよね。特別感があります。

ちなみに今回はあくまでけいおん!のシナリオ構成等の観点から見た特殊さについての記事なのでキャラデザが当時としては革新的だったとか楽曲がいいとかの話はしません。

分析!


ではそろそろ分析に入りましょう。けいおんの特異性を紐解くためにまずはおおざっぱに本編を振り返りながら解説したいと思います。

1年生(1期7話まで)

まず7話で1年消費です。1期はなかなか早いペースで進めているので7話までの間*2

  • 軽音部結成
  • 主人公の楽器(ギータ)との出会い
  • 夏休み(合宿)
  • 顧問決定
  • 初めての学園祭ライブ

という大きなイベントをすべて済ませています。
めちゃくちゃテンポがいいです。

個人的には日常アニメとしてのけいおん!はこの頃が一番全盛期だったと思います。
キャラも4人ちょうどバランスがよかったですし。おすし。

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初期メンバーバランス

2年生(1期8話~最終回まで)

  • 新入部員(あずにゃん)入部
  • 夏休み(合宿)
  • 2回目の学園祭ライブ

8~12話までです。ボリュームの高かった1年と比べると大きなイベントはなくなりました。現実の高校も2年は特にやることがないので仕方がないです。
また新入部員あずにゃんに関しても一部不要だという意見があり、たしかにあずにゃんの参入で7話まで安定していたキャラクターバランスが崩れましたが一応原作通りですし、後々語りますが2期においては非常に重要な役割を持ちますので個人的には必要なキャラクターだったと思います。

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バランス(梓加入後)

1期まとめ

前半でだいぶ飛ばして途中でペースを緩め、最終回手前でちょっとだけ転をつけて*3最終回ではきちんと感動させる*4お手本のような日常アニメのテンプレートで1期は幕を閉じました。基本的に日常アニメは1クール*5で1年消費しますがけいおん!は1クールで2年消費していますのでそこもデカかったかなと思います。それもただ駆け足のダイジェストではなく大きなイベントだけ重点的に見せていったのがあのテンポの良さを生み出していたのではないかと。純粋に構成が丁寧で上手です。最終回でも主人公の唯の人間としての成長っぷりをしっかりと表現できていると思います。ここらへんは特に評価が高いです。

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2期(3年生~卒業)

さてさてついに本命の2期です。1期がブレイクしたからか2期はまさかの2クールあります。それに対し作中での時間は1年しかありません。
つまり1期とは正反対で今度は2クールかけて1年を掘り下げていくわけです。
それもあって2期は1期と比べると賛否両論なんですよね。
主に叩かれる点としては

  • 尺が長いゆえの話のマンネリ化
  • キャラ崩壊(主に唯)
  • 音楽要素がさらに薄くなった
  • 紬ちゃんの影もさらに薄くなった
  • 1期人気キャラ澪の前髪まで薄くなった(澪のハゲ化問題)
  • ラソン

 などなどが挙げられますが僕は2期もすきです。

推測ですが2期はもともと1クールの予定でしたが大人の事情で2クールになってしまったのだと個人的には思います。

持論ですが創作とはドミノ、または積み木のようなものなのでしっかりと計画的に物語を積み上げていけばいくほど終わるときのインパクトも大きく感動的なものになります。卒業という王道かつ青春ものにおいて最も強いカードがある以上それを魅せるためにはとにかく青春という日常を見せつけていくのがなんだかんだで創作においては一番効果的なのです。
そう考えれば2クールという長い期間も結果オーライだったかと思います。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

異質!


さてさて、ここまではあくまで日常アニメとしての創作論です。けいおんは日常アニメとしてもたしかにそのテンポと巧みなキャラクターの魅せ方などでかなりハイレベルな仕上がりですが、それだけではありません。むしろ本当にすごいのはそこではなく日常ジャンルのタブーに踏み込んでおきながら奇麗に着地したという点です。
詳しく説明するために2期をさらに深く解析していきましょうかね。

前半(といっても20話まで)

 

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

あんまりおもしろくないですね!

はっきりと言います。僕も正直2期の前半部分はつらかったです。アマプラ一気見していたのもあると思いますが*6最初はおもしろくてもさすがにこのノリで1.5クールやられるのはつらいです。1期だとこれより短い期間にいろんなことしていましたからね。しかも軽音部のバンド活動全然描かれてないんですよ。つらいです。
しかし僕は耐えました。2期は最後究極の感動イベント卒業式が待っています。
絶対最後感動するやつです。
この苦行を越えた先に真の感動が待っているとなれば1話も見逃すことなく最後まで見るべきでしょう。そうでしょう?

でも面白い話も普通にありましたので見ようと思えば全部見られます。つらい展開も特にないのでストレス耐性皆無のオタクにもやさしいです。

後半(20話から最終回まで)

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

ここからです。ここから本領発揮です。
アニメけいおん!の本当にすごいのはここからなのです。

1期も含めると2.5クールにもなる長い旅はすべてこの大掛かりな青春ドミノを倒すためにあったと言っても過言ではありません。

20話

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

20話は軽音楽部最後の文化祭の回であり、同時にアニメけいおん!日常アニメの殻を破る回でもあります。とても重要な回です。

そんな20話ですがなんと軽音部の学園祭パートが半分以上を占めています。
学園祭は1年に一回のイベントで1期合わせると合計3回やっています。そして2期は3年生での1年だけなので学園祭の回はこの回だけです。約20話ぶりです。番外編を入れるともっと久々です。2クールでたった一度しかない重要なイベントとなれば1話まるまる贅沢に使うのは賢い選択です。ネタバレは避けたいので詳しくは言いませんが内容もよくも悪くもひとつの学校のとある部活って感じで無難に表現していたのは天才的でした。めちゃくちゃあっさり終わります。ここであっさり終わるからこそそのあとの余興が映えます。え、もう終わりなの?ってなるからこそ終わりというのは残酷であり大きなインパクトがあるのです。

凡人の僕が同じ回のコンテをやっていれば恐らくめっちゃ華やかに仕上げていたかもしれません。でもそれじゃダメなんです。

終わりの始まり

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

日常モノにおいて終わりはタブーとされています。日常モノはずっと続くのがウリなのであり、したがって大抵の日常モノは最終回を敢えてなんでもない回で済ませたりすることが多いです。

けいおん!の本当に恐ろしいところはそのタブーとされている日常の終わりをじわじわと近づけてくるところです。

最後の学園祭を終えた20話以降、これまでほとんど触れられていなかった*7卒業。つまり日常の終わりを露骨に匂わせてくるわけです。なんだよこのアニメ……。

中野梓の存在

そしてここで重要になるのが中野梓こと軽音部唯一の2年あずにゃんです。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

彼女に対しては存在がいらないという心無い意見が存在しているのも事実ですが、僕はそうは思いません。むしろここからのパートにおいては必要不可欠なキーパーソンとなります。

20話以降けいおん!!あずにゃん視点になることが多くなってきます。それには当時人気キャラであったあずにゃん贔屓という主張もありますが僕はそうは思いません。あくまでそういう演出であったと思われます。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部




ではなぜあずにゃんの出番視点が増えたのか、答えは簡単です。
あずにゃんと我々視聴者には大きな共通点があるからです。

あんなかわいいあずにゃんと気持ち悪い俺私たちが同じなわけないだろ!
と言いたいところですが見た目の話をしているのではありません。置かれている環境が一緒なのです。

 取り残される存在

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

軽音部の唯達4人組はちょっとネタバレになりますが最終的には同じ大学に進学します。つまり実際は卒業後は環境が変わるだけで日常は完全には終わることはありません。しかしあずにゃんと我々は違います。あずにゃんはまだ2年生なので来年で、少なくとも1年は唯達と同じ大学に進学することはできません。
我々も唯達が卒業し、最終回を迎えればそれより先はもう彼女たちの日常を見ることはできません。*8どちらも取り残される存在なのです。

したがって必然的にあずにゃんは我々と最も近い立場として物語のセンターに立たされることになります。そうすることでけいおん!という日常、世界の終わりを生々しく正確に表現することができるのです。

卒業!


さてさて怒涛の終焉への追い込みからついにその時は訪れます。卒業です。とはいってもそのあとに番外編が3話くらいあるのですが僕は先に番外編をみて最終回を最後に見ました。*9辛いのはわかっていても最後は最後として見届けたかったので。

最終回は誰もが予想していた通り、唯達の卒業式の回です。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

この回のすごいところは何といっても自然なんです。ありのままというか、露骨に泣かせに来ないんですよ。あくまで卒業式という雰囲気だけで泣かせようそしてくるというか*10、そんなこんなで卒業式自体は結構あっさりと終わるんです。時間で言うと3分弱。脚本としては式前の緊張とか終わった後ののんびりした空気とかに重点を置いているみたいですね。なんかそこが妙にリアルなんです。思えば僕も高校の卒業式はあっさりと終わりました。青春らしい青春を過ごしていなかったからかもしれませんが……。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部
あずにゃん

卒業式はあっさりと終わり一同は部室の音楽室へ集まります。

1人だけ残ることになるあずにゃんの今後を心配する卒業メンバーに大丈夫と言い張る姿が健気でもうこの時点でちょっと視聴している身としても心苦しかったです。

最後に手紙を渡して笑って見送ろうとしていたあずにゃんですが……ここ見てしまったんですね、3年生の賞状筒
そしてそれを見たことで唯達が卒業するという事実を実感してしまい、遂に、あずにゃんは泣いてしまいます。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

ここら辺の演出本当に天才的ですよね。実はギャグシーンを除いてあずにゃんが泣いたのはここが初めてなんですよ。3年生組は例の20話の文化祭後に泣いたわけですがあずにゃんだけはそこでも泣いていないんです。あずにゃんが泣くのは本当にこのシーンだけです。BGMも露骨に泣かせに来るようなやつではなくいつもの日常回とかで流れるやつなのが本当にセンスの塊です。まあ特別仕様にアレンジはしているんですけど。
逆に唯達は20話でこそ抱き合ってわんわん泣いたわけですが最終回では全く泣いてないんです。むしろやりきったという感じですごく清々しいというか、悠々としているんです。そして怒涛の先輩ムーブ、すごく頼もしいです。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部



3クール見届けた身としては初期メンバーの成長っぷりに感無量です。最後まで見て本当によかった。

 

まとめ!


なんかけいおん!を一方的に熱く語っただけで途中から創作理論そっちのけでしたが、けいおん!は創作的に一体何がすごいか要点をまとめさせていただきますと

  1. 日常アニメでありながらそれの終わりを容赦なく突きつけこと
  2. 不要とまで言われたあずにゃんの存在意義を肯定するどころか必要不可欠にしたこと*11
  3. 終わりを自覚するタイミングなどからの緻密な対比表現*12

等の斬新な展開が主にすごいと僕は言いたいです。

日常ものでちゃんと最後まで描き切る作品って、意外と少ないんですよね。一応日常系の始祖にあたるあずまんが大王が既にやっているとはいえけいおん!はまた違う路線を感じました。なによりあずにゃんという存在がデカかったです。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

日常モノといえばたいていは俺たちの日常はまだまだ続くぜ!って感じで終わってたりするんですけどけいおん!は絶対にあってはいけない完全な終わりを我々に匂わせるだけ匂わせておきながらいざその時が来たらはい卒業って感じで終わらせてくるんです。そのせいで喪失感がすごいです。ドミノの最後の開花を敢えて設置しなかったんですね。今までそこそこの数の漫画アニメを見てきましたがここまで終わりというものがじわじわと迫ってくるように感じた作品は初めてでした。

できるだけネタバレは避けましたが本当はもっと語りたいんです。あんまりうまくないですね!のくだりとか実際の学年ごとの時間感覚とか独特の雰囲気を上手に再現してるところとか最後の文化祭後のやりとりとか天使にふれたよ!とか劇場版の屋上のシーンとかいろいろと
とりあえずけいおん!名作なので見てくださいってことです。

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©かきふらい芳文社/桜高軽音楽部

 


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*1:まああそこは完全に我が物にしていますが

*2:7話はおまけの日常回みたいな感じなので実際は6話

*3:律と澪の仲たがい

*4:回想を交えた唯の成長をしっかり描写

*5:1クール=12話分

*6:リアルタイム勢にとっては久しぶりのけいおん!日常回で歓喜していたかもしれません。

*7:折り返し地点の13話とかでちょこっと触れてた程度

*8:当時大学編はまだなかった

*9:恐らく時系列順だと12話→27話(番外編3)とんで21話→25話(番外編1)→22話→26話(番外編2)→23話→最終回

*10:澤ちゃん先生のシーンくらい

*11:実際あずにゃんがいなければここまで精密に終わりを表現できなかったと思う

*12:悔しいですがここら辺のすごさは言語化が本当に難しい